アクト-レヴュードライブ

備忘録的なものです。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』感想─超絶!地球最大の怪獣大乱闘が今そこに!

The Art of Godzilla: King of the Monsters

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』観ましたか?ゴジラ史上屈指の名作である『ゴジラ ファイナルウォーズ』のファンと公言する監督が、撮影前に『ゴジラモスラキングギドラ怪獣総進撃』を観て作った映画である『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を観てからこの記事を読んでください。観た人は……スクロールしても文句を言わないことを約束してください。

※ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今作は前作からちゃんと続いてるので、こう、ふわっとした繋がりとかはあるんですけど、まあ別に観てなくても何とかなるぐらいのストーリー構成ではありますね。あまりこういうこと言うのも何ですが、「ゴジラにストーリーなんてあってないようなもの」をやや地で行っている映画かと。その上で、きちんと色々な暗喩や深みを作っている、シンプルさ故の強さがあります。

前作『ギャレゴジ』も非常に怪獣映画としてのクオリティがバカ高い映画でしたが(人間ドラマの完成度も、もちろん高い)、今作の、所謂『ドハゴジ』は、言うなれば怪獣大乱闘映画としての完成度が頭一つ分抜けてると言えるかと。

 

まず冒頭から構成が非常に上手なんですよ。母娘の日常かと思えば、実はモナークの基地だった、という導入から、モスラの登場、そして南極のギドラ、消えたゴジラ……と、これでもかというほどに怪獣映画、という感じの映像を見せつけてきます。

もういちいち怪獣が登場するときの画が本当かっこいいんですよ。雷鳴の中、南極の氷を砕いて登りくるギドラ、滝の中翅を広げるモスラ、噴火と共に現れるラドン、海を割って熱戦を空に放つゴジラ……オタクの考えた、こう怪獣が現れたらかっこいいよな、という妄想を、ハリウッドマネーによって極限まで理想的な映像として具現化されています。

また、前作よりも進化したアクションも見どころです。ギドラはグリグリと動くしゴジラもグリグリ動くしラドンモスラもめちゃくちゃ高速で飛行します。かーなーりー派手に怪獣バトルをやってくれるので非常にお腹いっぱいになります。

特に終盤のギドラの見せ方が非常に良い。お前の主食電気だったのか……という驚きと共に、範囲攻撃を見せてくれますし、左頭(1代目)はやたらと萌えキャラですし、何より強い。僕個人の好みのギドラは、人間相手には無双できるけどゴジラ相手になった瞬間ボコボコにされるギドラ(『VS』、『GMK』等)なので、若干解釈違いな面もないことはないのですが、まあ強いギドラは新鮮だったので良いです。というか、地味にあのギドラ飛行時のSEが流れてくれたのが良すぎる。

 

SEネタから派生しますけど、ちょいちょい過去作のBGMを使ってくれていたのが非常に嬉しいです。前作では流れなかった(確か。観たのが昔なので不確かです)ゴジラのテーマが流れたのもそうですが、怪獣に関連するテーマ曲が度々流れてくれたのが非常に良い。特にモスラの歌の流し方は、本編でのモスラの役割と相まって感動できるものになっていますね……。

 

ストーリー面の話をすると、非常に今回正気じゃないです。いやまあ、普通といえば普通なんですが。

怪獣好きが怪獣映画を撮るので、怪獣が極限まで活躍できる環境を整えるのは当たり前じゃないですか。つまりはそういうことで、だからこそ話の核が「怪獣信仰」になったり、渡辺謙扮する芹沢博士が敵キャラに押されて普通になるんですよ。そもそも「怪獣が先!人間は後!」を地でやってんだから人間ドラマが少なくなるのも当たり前なんですよ。あれでも多い方だと思いますけどね。

怪獣信仰というテーマは、まあゴジラが東洋発祥の作品であれば当然行きたく帰結なのかな、という風には思いましたね。というか作中でもがっつり言及してましたし。東洋に限らずですが、人間は未知の力をよく「神」として、理解できないものを理解を超えたものとして崇め、讃えるという行動を取ります。そして祈るんです。ただ、自分が生きていられるようにと。本作はそういう、信仰、祈りに突っ込んで話を展開してたのかなというふうに思いますね。

まあそれはそれとして人間達はみんな物分かりが良すぎるのでゴジラをすぐに受け入れるし自然回帰主義者達は怪獣を解放しようとするし、軍人は決断力がありすぎるのでオキシジェンデストロイヤー(これの登場が一番驚いた!)を事後報告で撃ったりすんですよ。観てる時には特段疑問に思わなかったけど、まあ並べ立てて倫理と照らし合わせるとやばいですね。これでも一端ですからね。

あとやっぱり芹沢博士が良かったです。前作から引き続き、ゴジラ、というか怪獣に対する異常な信頼を寄せていた彼ですが、その最期は色々と考えられるものになっていて……。怪獣を人知を超えたもの、あるいは神とまで崇めた男が、最期にその怪獣に対して、「友」と告げる。これに意味がなかったら嘘ですよ。てゆうか、その前でわざわざあの懐中時計を出したので確信犯じゃないですか。意味間違ってますけど。あの原爆によって壊れた懐中時計をわざわざ出したんですよ。出さなくても良かったものを。そして「原爆を持って」ゴジラの下に向かうんですよ。同じ、原爆の被害者であるとも言えるゴジラの下に。ゴジラ被害者の解釈がいつ頃からなされていたかは僕はあまり詳しく無いですが。怪獣を信奉していた男が、その実、友だと思っていた、思いたかった、という非常にエモーショナルな最期を迎えられたのが中々……初代ゴジラのオマージュ的な意味でも完成度の高い、この映画屈指の名シーンです。

 

後は、まあ細々とした不満点をつらつらと書き散らして行こうかなと。

まずは、これは正直正負両面あるんですが、怪獣バトル、せっかく凄いことやってるのに画面が暗い+めっちゃ寄ってるのダブルコンボで見辛いことこの上ないです。そもそもこの映画、怪獣映画、というよりは怪獣災害映画の側面の方が大きいので、要するに『ガメラ3』の災害パートみたいなもんがずっと続くんですよ。今だったら『巨影都市』が一番イメージに近いかな?まあ、正直同じことやっても仕方ないし、という部分があるのも理解できるし、あれはあれで良かったんですけど、ゴジラ特有のスタジオの広さを活かした超遠景カットも観てみたくはありました。『ファイナルウォーズ』もそんな感じのカット結構ありましたし、期待してたんですが……。画面の暗さは慣れました。

後これ完全なるイチャモンと理解はしてますが、熱線撃たなさすぎですね。マジでVS時代の歩いてたら何故か熱線撃つ、ぐらいの雑さが大好きなので、もっと軽々しく撃って欲しくはありました。まあなんか、これ言ったらボコされそうな気もするんですが、正直予算無い感じでしたね。デストロイヤー後の死んだ魚が浮かび上がるカット、正直限界感じましたし。存外建物破壊も少なかったですし。

バーニングゴジラが出てきたのは本当に凄かったし嬉しかったんですが、体内放射(?)しか撃たない上にトドメが「ふみつけ」だったのどうなんでしょうか。嫌いじゃ無いですが、『ファイナルウォーズ』で大気圏まで吹っ飛ばしてたのを考慮すると、最低でも熱線で決めて欲しかった感はなくはないです。

 

そういう点を除けば、全体的に完成度が非常に高いですし、テンションもおかしいし、めちゃくちゃ良かったです。なんか「歴代の人気怪獣やで〜」って面して出てきた新怪獣のマンモスゴリラ(仮称)を含む4体の怪獣(ムートーお前いるやんか!)に囲まれてゴジラが咆哮を上げるラストは本当に鳥肌が立つぐらいよかったですし、今後に非常に期待が持てます。というかここまでハードル上げると、『ゴジラ対コング(仮)』が大丈夫なのか、という気になりますが、まあ『髑髏島の巨神』がはちゃめちゃ良かったので心配は無いですね。皆さん、『KOM』観てね〜!

 

ゴジラ FINAL WARS

ゴジラ FINAL WARS

 
ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(オリジナル・サウンドトラック)

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(オリジナル・サウンドトラック)