アクト-レヴュードライブ

備忘録的なものです。

『映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』感想─丁寧で繊細な命と命のつながりの物語。

『映画スター☆トゥインクルプリキュア ~星のうたに想いをこめて~』主題歌シングル(CD+DVD)

今ブログを書いてる僕は完璧に素晴らしいものを観て梛の極地の心持ちなんですが、その間に感想を書き上げたいと思います。いや、本当に素晴らしかったな……。

※ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『映画スタプリ』、もう好きなところばっかりで逆に感想を書くのが難しいので、僕に刺さったポイントにまとめて行きますが、この映画はララがひかるのステージに上がるシークエンスを描いていると僕は解釈しています。

そもそもこの映画は主人公である星奈ひかるがかなり控えめに描かれていて、本当の意味での主役は星奈ひかるではなく羽衣ララなわけです。ひかるに関する内面描写が一切無く、(映画というメディアの違いもあるだろうが)いつものあらすじもありません。「通常」から外れたメディアだからこそ通常では無い物語ができるのはある意味当たり前の話ですね。

 

ララがひかるのステージに、という言葉を使いましたが、もっと正しく言えばこれはイマジネーションの映画なんですよ。ノットレイダーは話の中核には絡んではきませんが、イマジネーションこそがユーマの未来を決定づけたわけです。

UMAは地球に降りてきて、ひかるとララという二人の生命に出会います。そして二人との交流を通じて、きっと良い星になるだろう、と物語は幕を引きますが、この「だろう」こそがイマジネーション──想像力です。

本作のヴィランの一人、バーンはこう言いました。「スタードロップの今後を決めるのは人のやること、ならば何をやっても変わらない、だから好きにする」と。一見筋が通っているように見えるこの論理も全然正しくないのです。何故ならば、そこにユーマの気持ちは入っていないから。ユーマだって生き物である以上、自分の気持ちがあります。それは本作冒頭の静謐さあふれるシーンや、星を見上げて歌っているシーンからも明らかです。だからこそひかるはユーマを宇宙に帰すことを受け入れ、ユーマの気持ちを理解したララも別れを受け入れます。

ララは最初、ユーマを「危険な存在」として拒絶しました。しかし、ユーマとの旅を経て、ユーマのことを理解しました。カッパードさんも言っていたように、恐怖は判断を鈍らせます。恐怖は理解できないものから生まれます。ララは最初ユーマを理解していませんでしたが、歌を聞くユーマを見て、ユーマを理解したんだと思います。

この構図はシンプルに「地球人と宇宙人」という構図に持っていくことができて、物語当初のひかるとララの構図に持っていくことができるんですね。ひかるのことが理解できなかったララと、ララを理解しようとしたひかる。この映画はひかララ大勝利の映画ですが、その構図にはきちんと意味があったわけです。かつてわかり合ったもの同士だからこそ、ユーマと触れ合うのはひかるとララじゃなければならなかった。これがえれなでもまどかさんでもユニでも、きっとララはユーマと通じ合えなかったと思います。

ひかるが持っていて、ララが持っていなかったもの。その答えは物語の中にあります。僕が言葉にしてしまうと、そのとてもたいせつなものが無くなってしまいそうなので、是非とも観てください。きっと、後悔はしないはず。

 

終わりそうな感じですけどまだ色々と……。

本作の戦闘は非常に素晴らしかったんですが、実を言うとかなり「いらないなぁ」と思いました。こう、そこ以外のコンテクストが非常に良かったので、逆にそれが異物感を放っているんですよね。描写としてはかなり唐突なライブシーンも、本作が「歌」というコミュニケーションの手段として根源的とされるものをテーマにしている以上、納得しかないんですが、それだけにあのバトルが都合感があり……まぁ、拗らせた意見なので気にしないで欲しいんですが……。繰り返しますが、バトル自体は素晴らしかったです。劇場版というだけあって、テレビよりもパワーアップした描写の数々が見られました。特にえれなの脚技が良かったですね。

 

作画は全体的に安定していてめちゃくちゃ良かったんですが、特に素晴らしかったのは光の使い方ですね。

影と太陽が全体的に素晴らしかったんですが、特に印象に残っているのが終盤の「ユーマを宇宙に帰さないと」のシーン。戦いが終わり、夕暮れの景色の中告げられる別れ。ひかる達はそれを悲しみ混じりに受け入れるも、ララだけはそれを受け入れられない。そうしている内に、日は沈み、夜になり、「家に帰る時間」になる……という風景でそのシーンの持つ意味を伝えてくる手法が凄く上手かったように思います。それを伝えるアンは影の中にいて、ひかるは光と影が半々……という風に解釈もできますし、とにかくあのシーン好きです。

あと世界中を巡るひかララもめちゃくちゃ良くて、ある種手垢の付きまくっている、下手すれば陳腐になるようなあの観光名所巡りを極めて美しく、意味のあるものに昇華していたのが凄い良かったなと。個人的には星を見上げて「あれが南十字星」ってララとひかるが話すシーンが一番好きですね。ひかるの目には銀河が映るけど、ララの目には映らない。ひかるには南十字星がわかるけど、ララにはわからない。同じものを見ているけれど、同じものを見てはいない。本作のテーマの一つを象徴的に表徴しているシーンだと思います。

テーマの話だと、終始ユーマが言葉(所謂地球語)を話さなかったのは凄く良かったです。ラストとか言葉を話しても良さそうなのにそれをしなかった。その判断をしてくれたことが凄い良いですね。多分喋ってたらここまでこの作品のことを褒められないと思うので。歌があれば、みんな繋がれるんですよ。

 

本当に素晴らしい映画でした、『映画スター トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』。正直なところ今年ベストに食い込んでくるレベルで良かったです。

テレビ本編も、終わりが見え始め、一体どうなるのか気になってくるところ。楽しみですね。