アクト-レヴュードライブ

備忘録的なものです。

『スパイダーマン:スパイダーバース』感想─マイルスの物語を徹底した、お祭りアニメの傑作。

「スパイダーマン:スパイダーバース」オリジナル・スコア

いやー、すごい映画でしたね、『スパイダーマン:スパイダーバース』。もう散々TLが期待値を上げていたので、「正直そんなでもないやろ……」と思って観たんですが、その期待値はしっかりと超えてきたから凄いです。

※ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スパイダーマンの春映画的な存在である(?)『スパイダーバース』の映画かということで、あまりスパイダーマンに明るくない(『ホームカミング』と『ヴェノム』のみ)僕が観に行って果たして楽しめるのかどうか一抹の不安があったんですが、そんなことは全くなくてよかったです。

まずシンプルな3DCGアニメ映画としての完成度が非常に高かったですね。僕はディズニー等の尋常ではない完成度のものを除いて基本的にフルCGというものが大嫌いなんですが、『スパイダーバース』はその点非常にクオリティが高く、満足できました。もう散々に言われていることですが、今作に登場する様々なスパイダーマンの画風の違いをしっかりと同じ画面で殺すことなく表現していたのは、すごいさらっとしているけどものすごいことなんですよね。

アクションの完成度や魅せ方、それに世界の描き方といったものも非常に先鋭的、雑にいえば攻めた表現で、ドラッグでも決めてんじゃねえか?と思うぐらいには良かったです。

 

ストーリー面も非常に満足できたものでした。

スパイダーマンの春映画的なもの、という知識だけはあったので、正直大丈夫なのか?と思っていなくはなかったのですが、一人のヒーローのオリジンとしてとても完成度の高いストーリーでした。

映画途中までは、こうやって先輩スパイダーマンに教育されてスパイダーマンになるのかなー、とか甘いことを考えていたんですけど、決してそうではなかったのが非常に良い。その象徴が中盤のマイルスがボコボコにされるシーンでしょう。

たとえ自分と同じものが覚悟を無理やり促してもそれは「違う」んですよね。どんなに先輩達がスパイダーマンとしての極意を言ったところで意味がない。何故なら、それはスパイダーマン、ヒーローとしての本質とは異なるからです。

 

親愛なる隣人、ピーター・パーカーの死を経験して、尊敬する叔父アーロンの死を経験して、そして父親との「和解」を経て、スパイダーマンとしての覚悟を決めることができるんです。それはどれだけ言葉で伝えられても理解できるものではないんです。

どこかのスパイダーマンも言っていましたが、スパイダーマンをヒーローたらしめているのはスパイダーの部分ではなく、マンの部分なんですよ。それが必要な勇気であり、スパイダーマンの本質なんですよ。

そしてマイルスにとってマンの部分、必要な勇気は父親からの肯定、自己を認めてもらうことだったんです。最初は選択の余地は今は無い、と言っていた父親が、マイルスの魅力を肯定し、束縛から解放したんですよ。それがあの「愛してると言わなくてもいい」というセリフの意味であると僕は解釈しています。

 

ここら辺のオリジンに、先輩達が一切関与してないのが本当に好きなんですよ。歴代スパイダーマンの物語ではなく、あくまでもマイルス・モラリスの物語である、というのをここまで見せつけられたのが本当にすごい。

 

とはいえ、いくらなんでも賛否の賛のみにできるほど僕も人間ができているわけではありません。

いくらか目についた点もありますが、一番は本作の「Kawaii」枠、ペニー・パーカーとSP//dr(読みは「すぱいだー」だと思ってます)に関してですね。かわいいのはいいんですが、シンプルに活躍が少ないのが文句ですね。まああのメモリースティック(正式名称忘れてしまった……)を直すという割りに重要な役目を果たしたのでストーリー的にはちゃんと活躍したんですが、アクション面の活躍がパッとしないのが……。

まああとは人数の問題ですが、シンプルに後半3人の扱いが若干雑でしたね。オリジンについても若干不明瞭なままになってしまいましたし、何より画面に映っている時間に差異がありすぎです。

 

と、まあつけられるいちゃもんを除けば非常に満足度が高く、名作と呼ぶにふさわしいアニメです。

スパイダーマン初心者でも楽しめると思いますし、何より映像表現がすごいのでこんな記事読んだら暇があったらさっさと観に行きましょう。多分しばらく終わりません。

 

「スパイダーマン:スパイダーバース」オリジナル・スコア

「スパイダーマン:スパイダーバース」オリジナル・スコア

 
P.S. RED I (通常盤) (特典なし)

P.S. RED I (通常盤) (特典なし)