『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』感想─『リュウソウジャー』らしい『リュウソウジャー』の観れる傑作。

正直言ってジオウにだいぶ持っていかれて話題にすらなってなかった『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』。前作『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』が『仮面ライダービルド』に負けず劣らずの男男巨大感情の映画だったことを考えると、今作が悪いというより『ルパパト』が凄すぎたのと相手が悪すぎたと考える方が良いと思います。では行きましょう。

※ネタバレ注意！

本作は奇しくも同時上映の『ジオウ』と題材を同じくし、タイムスリップと未来の話をテーマとしています。が、そこに『リュウソウジャー』らしさという具材を投入し、最悪の闇鍋が完成することで何かしら異常な完成品が出てきてしまいました。

まあまずは特撮面の凄さの話をね、して行きましょうよ。

本作は冒頭からCGの恐竜と実写背景との合成という日本ではあまり見ない映像を繰り出して来て、さらには巨大戦では円谷特撮のようなダイナミックな映像が見れました。単純なミニチュアの出来だけではなく、それを活かしたアクションやCG、合成の使い方等、近年では最高レベルの特撮だったと思います。

また、アクションの完成度も非常に高かったです。まあ、正直日本国内では坂本浩一監督が特撮界隈ではトップレベルだと思っている口なのですが、上堀内監督も撮り方が非常にうまい。ガイソーグ対リュウソウジャーの一対五のカメラワークや、キシリュウジンのアクションなどなど、アクション面ではここ数年の劇場版では最高峰だと思います。『ルパパト』も凄かったですが、それを更新するレベルで凄いです。アクションに関しては戦隊はライダーを超えていると思いますね。

ストーリーですか？いつもの『リュウソウジャー』と言えばだいたい伝わると思うんですけど。はい、真面目にやります。

でも今回はまだ企画が走ってた頃から撮ってたからか、まだ大人しめな『リュウソウジャー』という感じでしたね。夏映画特有の尺の無さによる駆け足を除けば、そこまで変な点は無かったと思います。ただ、駆け足の弊害はテーマ性の性急さに直結してしまっているので、そこだけが残念かと。

『ジオウ』と妙なシンクロニティを発揮しているという評判通り、今作も過去と未来の話がテーマです。誰かのエゴによる傲慢な未来ではなく、みんなが生きていくことで生まれる未来。そういうものを尊いものとして語り継いでいければいいな、というある意味陽キャの極みみたいなテーマですね。ディズニーが好きそう。

ですが、尺がないので読み取るのにやや頭を回す必要があります。わかりやすいと言えばわかりやすいですけどね。流石に。

まあ面白い点も多々あって、陸のリュウソウ族の野蛮さがきちんと回収されていたのは笑いましたね。ヴァルマに「戦え！」言われて割と迷わずに剣を抜くのさあ……みたいな。

後真面目な面白さだと、正義の描き方が一貫してたのが凄く良かったですね。自己犠牲が正義、というのも昨今どうなんだ、という話ですが、受け継がれるソウルの話なので、ある意味正しいのかも。

後何よりコウが良かった。コウ役の一ノ瀬楓さんの演技も素晴らしく、普段のかわいい系から、本気になると一気に眼光がますあの恐ろしさすら感じさせる表情は凄いですよ。デビュー作とは思えないほどの演技力。ガチ恋勢になりそうです。

まあ一番の問題点はカナロくんの出番がナンパしただけなことですけど。おかしいでしょ。リュウソウゴールドのアクションを楽しみにして観に行ったと言っても過言ではないのに……製作陣！謝罪しろ！(嘘、謝罪しないで)でも、実際追加戦士の出番無しでもいいとは流石に驚きましたね。そんなことしていいのか、みたいな。次回では改善されているといいですね。流石に「活躍が少ない」と「活躍がない」では次元の違う話なので。まあ無理矢理ねじ込むのもどうかとは思うんですが、そこは手腕かなと。

まあカナロくんの出番以外は特に不満がないですね。本当に良い映画だったんですが、同時上映した映画が強すぎた……。

そう言えば、「今回新造スーツキシリュウジンだけだったよな」ってずっと言ってたんですが、そういえばあの巨大マイナソーいましたね。すっかり忘れてました。でもキシリュウジンの最後の活躍が隕石相手に「ハァアアアアアア！」してるだけだったのなんとかならなかったんですかね。