アクト-レヴュードライブ

備忘録的なものです。

『メトロイドドレッド』は令和の世に蘇った「最強なる戦士」である

メトロイド ドレッド -Switch

 

シリーズとしては19年ぶりとなる続編、『メトロイドドレッド』(以下『ドレッド』)。作品単体としては15年の雪辱を果たす形で世に登場した本作は、ファンにとって期待を裏切らない作品となりました。以下、ストーリークリア時点までの感想を、ネタバレを交えながら書いていきたいと思います。また、記事の性質上、過去作、特に『メトロイドフュージョン』(以下『フュージョン』)のネタバレも多く含みます。事前にご了承ください。

 

 

シリーズ完全新作で描かれる新しいサムス

 

本作で真っ先に語るべきところはやはりサムスでしょう。スマブラなどでも知名度を上げた彼女の、『フュージョン』を経た新しい姿は待望されてきました。『フュージョン』の筆舌に尽くしがたいビジュアルから一転、筋繊維のような有機的なパーツはありつつも、パワードスーツが復活し再び純粋にヒロイックな姿を取り戻したサムスが、最新世代のスペックで見ることができるのはやはり嬉しいもの。個人的には、『フュージョン』のパワードスーツも有機的で好きですが、やはりサムス、パワードスーツと言えばこちらの方が嬉しいです。カラーリングも、フュージョンスーツの青色を含みつつ、赤青白のトリコロールで彩られたビジュアルは前作から引き継いだものと、全く新しい要素の二つを感じさせ、またシンプルにかっこいいです。

これは後述しますが、ストーリー面でも新時代のサムスと言った様子です。『フュージョン』『メトロイドアザーエム』では饒舌にセリフを述べる姿が旧来のファンから否定的に取られてしまいました。一転、『メトロイドサムスリターンズ』では進化したグラフィックを遺憾なく利用し、セリフはないながらもサムスの感情をはっきり読み取ることができる、旧来のイメージを保ちながらストーリーを描く今らしいサムスが描かれていました。そして本作では、アダムと言った過去作からのキャラクターがストーリーを説明し、サムスは必要な場面だけで言葉を発するという、旧来のイメージを尊重しながらしかし個人としての意思を感じさせる、クールなヒーローとしての位置を確立しています。時には雄叫びを上げながら敵に立ち向かっていくサムスは、まさに現代に蘇った「最強なる戦士」の姿を克明に描き出していたでしょう。

総じてサムス周りは非常に満足度の高いものとなりました。スマブラ等でも彼女のイメージは補強されてきましたが、それらを良い方向に取り込んで懐かしくも新しいサムスを描いていたと思います。

 

美麗なグラフィックによって描かれるストーリー

本作のさらなる特徴としては、やはりそのグラフィックが挙げられるでしょう。Switchとしては非常に高クオリティのグラフィックによって、サムスの戦いは非常に奥行きのあるものとなっています。

番外編である『メトロイドプライム』シリーズなどでは緻密に構築された設定資料によって世界観を言葉豊かに語るスタイルが魅力ですが、やはりそこは本家である2Dメトロイドシリーズ言葉少なめに淡々とストーリーを進め、その細部については背景などからプレイヤーの手に委ねる伝統のスタイルは健在です。本作は久方ぶりの据置機メトロイドということもあり、とてもパワフルに舞台である惑星ZDRが描き出されています。

マップの左右上下の細かな装飾だけでなく、セーブルームの内装、地形に残る機械の痕跡、E.M.M.I.ゾーンの構造や気流の動きなど、惑星の構造や鳥人族の文明の跡を読み取ることができるグラフィックなどは流石の一言。この施設は何のために使われていたのか、この構造はどういった意図で作られたのか、などなど、非常に考察しがいのあるマップではないでしょうか。筆者はこれから再プレイ……もとい、アイテム回収の旅に出ますが、マップにも注目してプレイしたいです。

また、ストーリーも見逃せません。本作では鳥人族、そしてサムスに関する重大な設定が明かされています。ここでは仔細なネタバレは避けたいと思いますが、レイブンビークはなぜサムスを狙うのか、クワイエットローブは何者なのか、Xは本当にいるのか、E.M.M.I.がサムスを狙う理由は何なのか、そしてサムス自身の秘密とは……数々の伏線が張り巡らされた惑星を駆け巡るストーリーは重厚な読み応えがあり、その結末を迎えたとき、「ドレッド(dread)」の意味を知ることでしょう。

 

シリーズ最高レベルの難易度を誇るアクション

さて、本作の根幹とも言えるアクションですが……その難易度は、歴代最高の難易度と言っていいと思います。

『サムスリターンズ』の時点で……いや、『フュージョン』の時点で敵の攻撃力の過剰はすでにその片鱗を見せていましたが、本作でもそれは健在どころか、より悪化した形でサムスに襲いかかります。メレーカウンターの強化やスライディングの追加など、全体的にサムスの近接戦闘力が強化されたためか、ザコ敵の厄介さ、ボスの攻撃の苛烈さなどは、歴代でもトップクラス。その分、美麗なグラフィックで描かれる攻撃の数々は見どころのひとつなのですが、正直見ている暇はないと思います。

終盤にもなってくるとザコの接触ダメージだけでタンク一個分の体力を持っていかれるなど、正直やっていられない部分もありますが、その分サムスの攻撃力も高いです。再び全てのザコを一撃で葬り去る性能を獲得したスクリューアタック、歴代トップの火力を誇るストームミサイルなど、サムス側の攻撃性能は申し分なく、移動面も最大三回まで瞬間移動に近い速度での移動を可能にするフラッシュシフト、再び蘇ったスピードブースターなど、ボス戦での機動力も過去最高ではないでしょうか。

また、敵の攻撃が苛烈ではあるものの、決して理不尽ではない、という部分はさすがの任天堂印といったところで、どれだけ苛烈な攻撃であっても必ず避ける隙があり、また攻撃を叩き込む隙も同様に存在しています。この辺りのバランス感覚は他のメトロイドフォロワー作品ではなかなかお目にかかることができない部分であり、本家の意地を感じます。そして上達したときの感慨もひとしおであり、初見ではまったく通用しなかったあのボスの攻撃を簡単にかわし、グラブシーケンスまで持ち込めるようになればもう最高です。

敵の攻撃も非常に美しいですが、やはり最大の見せ場はグラブシーケンスでしょう。単にボスに掴みかかっての連続攻撃だけではなく、フィールドを存分に活かした三次元的殺法や、3Dであることを利用しフィールドを縦横無尽に駆け巡る攻撃など、バリエーション豊かで見ていて飽きませんし、何よりめちゃくちゃかっこいい。スタイリッシュなサムスのアクションを堪能することができます。

フィールドのギミックはまだ三割程度しか楽しんでいませんが、こちらも同様であると感じます。ハードの性能強化に伴い、これまでのように一つのエリアをクリアしたら終わり、ではなくいくつものエリアをシームレスに行き来してアビリティを取り戻していく、という構成は、今までありそうでなかった新機軸です。そのため、すべてのエリアが決して使い捨てなどではなく、常に変化し続けながら必要なものである無駄のない構成になっています。

アイテム回収こそ三割しかできていませんが、サムスが新しいアビリティを手に入れるたびにすぐにそれを使う機会を与え、存分に新要素を堪能した後で高難易度なアイテム回収へと繰り出させる構成は過去からの伝統であり、本作ではそれがより強化されています。まだまだ遊べるところがあるので、これからも楽しみです。後何よりスピードブースターでどれだけ悪さできるのか

 

19年ぶりのシリーズ完全新作は、最高傑作だった

19年の時を経て復活したメトロイドは間違いなくシリーズ最高傑作に名を連ねることができるでしょう。サムスを動かしていて楽しい、という必要条件を満たしながら、3Dになったことを活かして奥行きのあるマップ表現で世界観を表現し、計算されて構築されたアクションで手強い敵を倒していく楽しみ。過去作のいい部分を吸収し、独自の要素をしっかりと打ち立てて単なる焼き直しではない、まさに完全新作にふさわしい完成度でした。

余談になりますが、本作は非常にインターネットでの広報に力を入れているようで、多くの方がプレイしてくださっているようです。一人のメトロイドファンとして、とても嬉しいです。『サムスリターンズ』が次をつないでくれたように、『メトロイドドレッド』もまた次をつないでくれることを祈っています。

最後に、こんなにも素晴らしい作品を世に送り出してくれた任天堂、そしてMercurSteamへ、最大の感謝を贈って終わりにしたいと思います。本当にありがとうございました!