アクト-レヴュードライブ

備忘録的なものです。

『最悪にも程がある』シリーズ感想─女、女、女!至高の感情がそこに。

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何故同人誌の感想をブログにしているのか。

シンプルにツイートじゃ文字数が足りないのと、まあブログだったら作者にバレねぇだろっていう舐めがありますね。どうせ告知ツイート(PV19ぐらい)するんだから意味ないのに。いとう先生のファンですが、同時に畏怖の対象です……。と、前書きはこれぐらいにして感想を述べていきます。全作レビューです。

 

 

※ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『1』

記念すべき一作目ですね。東京に行った時、comic ZINリアル店舗に行って買った思い出があります。

とかく読んだ時に非常に衝撃を受けて、まさしく脳天をぶん殴られたような、そんな感覚を味わいました。

 

仮にもオタクという身分に属しているものとして、まあ最近までそれこそ自我なんぞ無く虚無に生きていたわけなんですけど(自我に目覚めた話はいつか……)、そんな折に読んだ作品だったので本当に、本当に良い意味で非常に衝撃的な作品でした。世のオタクはこれを通過していたのか、という悔しさにも羨望にも似た感情が読了後は芽生えました。

 

読んだ感想はそこそこに、内容についての話をすると、こういうことは最近はあまり言わないようにしてるんですが、作者からの挑戦状というか、だいぶケンカ売ってる作風だなと。なんというか、こう、巧い作品ってのは話より先にキャラ、人間を描くといいますが、この作品はそれを実践しているというか、作品で主張したいこととキャラに言わせたいことの折衷が非常に上手だなと。で、その主張をした上で作品から説教臭さを漂わせることなく、きちんと「キャラに喋らせている」という要件を満たしているのが凄い。僕も……………………まあ、話を書く人として尊敬したいセンスですね。

 

全作通して読んだ上だとキャラクターの設定がこの時点でもきちんと完成しているのが窺えたり、のちに向けてまだまだこの時点だとスロットルが全然だなという感じです。いや、開始3ページで主人公の足元で他の女女がセッ……してる漫画もそうそう無いと思いますが。そもそもスロットルの話をするのであればこんなTwitterに偏在している虚無を撒き散らすタイプのツイッタラーの具現みたいなキャラが主役なのも中々ですけども。

 

『2』

二作目(つまり第3話)は新しい女が登場したりと本格的に百合みが強くなってきます。いや、『1』だってちゃんと百合百合でしたけど。プラトニックだって性欲だって百合なんですよ、知りませんけど。東京ディズニーランドでミッキーの家並んでた時にこの議論がツイッタランドで爆誕してて僕も乗っかったりしたのが思い出されてきて吐きそうです。

 

閑話休題。本作から名波さんのブレーキというか、ブレーキは最初から壊れ切ってるけど有り体に言えばやばい面が見え始めますね。僕は常人なので最初何やってるのか理解できなかったんですが、即ストーキング……。

灯も本当いいキャラしてると思いますし、初登場の時の見開きに関しては死ぬほどかっこいいと思ってます。あれをあの環境で読めるんだから紙で読むべきなんですよね。

灯が出てきてから画面の緊張感が尋常じゃなく上がりましたし、名波と灯の対面シーンのピリピリした感じがこっちにまでひしひしと伝わってくるシーン構成なんかはほんと流石だなと言う感じです。

『2』読んで思ったんですがやっぱり川岸メンタル雑魚すぎますね。いや、メンタルクソ強女二人に挟まれてるからそう見えるだけかもしれませんが、この認識に関しては僕は自信があります。

 

ところで、ラストに出てきた古瀬さんがラスボスオーラ漂わせてた割に続編で特に絡まなかったのが笑いました。

 

『3』

この女がやばいアワード・2018年度優勝、名波茉莉也。いうて2018年産の百合読んでないのでなんともですが……。

 

上で古瀬さんが特に絡まないとか言いましたけどまあ『3』古今東西で主要キャラの因縁の決着をつけるためのナンバリングとされているから当然といえば当然なんですよ。名波さんがメインになるとは全く予想してませんでしたが。彼女視点で話が進むとは……。

 

安易なオタクなので名波さんがずっと一番好きなんですが、『3』でガチ恋勢になりましたね。忘れてください。

「昨日で帰ってきてたんですよ」→「急におじさん亡くなるなんて」のコンボマジでやばすぎてしばらく気づかなかったし気づいた瞬間変な笑い出ましたからね。流石に全てが川岸基準の狂信者。

名波さんの言語センスが独特なのは以前からですが、『3』では大概極まってますね。何言ってんのかわからなくて本当に考え込みましたからね。結局よくわかってませんけど。

いやマジで好きなんですけど、こっちが勝手にシンパシーを感じてるところもデカくて、特にふとした瞬間「自分がどうやって生きてたのかわからなくなる」状態に陥るのを通過した、と言う部分に。彼女は僕なんかとは全然違いますから、本質的にその共感は成立しないんですけど。壁になりたい人の気持ちが本質的に理解できましたよ。

 

名波さん本当やばくて、裸が見たいって言われて即座に裸見せようとするあたりとか本当にこいつ……ってなるんですけど、本質的に(これ使うの何回目だ?)生きるのが下手な人なんだなって、そういう面を見せるのが本当にこの作品巧い。川岸は案外本質をついたことを『1』で言っていたわけです。

川岸の童貞ムーブ、『1』からなんか無駄に凝ってて好きなんですが『3』の童貞ムーブ本当に極まってて笑うんですよね。このムーブが作品内の緩急にもなってるし意味がありすぎて面白すぎる。なんか、こう、そういう流れになってたのにマジで文章を人肌に書き散らすのは果たして男気(性別の話ではないです)があるのかヘタレなのかよくわかりませんね。

 

まあ『3』で一番やばいのきよちゃんですけど。なんなんですかあの人。

 

『程々』

多分表紙めくって一ページ目にカブトムシのオス同士の交尾が描かれている漫画は二度と読むことはないと思います(小並感)

前作で「付き合ってる」ことが確立した、訳でもありませんが、込み入った事情を説明する気もないですし、僕のブログ読んでる人はどうせ読んでる人なのでこう表記しますが、で、確立した後の川岸と名波さんの話な訳ですから、それをいとう先生が描けばまあ死にますよね。僕が。尖ったナイフよりもずっと鋭利な凶器ですよあれ。

灯×古瀬パートも非常に面白かったですね。良かったとかではなく、「面白かった」。特に灯は川岸名波以外と絡むと全く印象が変わるのが非常に。まあ灯のこと全くわかってないんですけど。だからこういう発言が飛び出す……。

 

ラスト2ページは酷い(褒めてる)

 

全体通して感想

懇切丁寧に作品内に全部描いてあるものの、それを読み解く作業が必要になる作品を例える時に『lain』しか出せない自分の語彙を本当に呪うんですけど、この作品もそういうタイプですね。多分意図的にかなりわかりにくくしてると思うんですよ。でも読み解くのに必要な情報は全部描いてあるのがタチが悪い。おかげで下手なことを言えないです。

まあそれはそれとしてとにかくひたすらに、そう、面白いです。シンプルに作品が殴ってくるテーマを味わうのもいいし、女女の巨大感情のヤバさを理解して震えるのもいいし、と、一作で非常に味わい深い名作です。今ならコミック ZINやメロブで買えるので無くならない内に買っておいた方がいいでしょう。百合をやるなら、この作品は必須です。

 

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