アクト-レヴュードライブ

備忘録的なものです。

『search/サーチ』感想─二つの親子を通して、インターネットの恐怖と人間の悪意を描く名作。

Search/サーチ (字幕版)

当時10月、色々と無茶をしてとにかく金がなかった時期で、去年で僕が唯一映画を一本も観てない月なんですよね。そしてそんな時期に限って名作と呼ばれるような映画は公開されるもので、『search/サーチ』もそう言った映画の一本でした。

TSUTAYAで借りてきたんですが、めちゃくちゃ面白かったですね。

※ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本作は全編にわたって、画面が一切パソコンやスマホのモニターから出ない、という試みの、正にデジタル全盛期に相応しい、新しいタイプの映画となっています。

が、本作が秀逸なのは、単に舞台が奇抜、というだけではありません。

しっかりと、示したいテーマに対して真摯である、という点が挙げられます。

 

本作は、母親が死んだ親娘から始まります。そして、その娘が誘拐される、というストーリーです。シンプルに、インターネットを活用して犯人の手がかりを探していく様や、常に緊迫感溢れるカメラワーク(?)、伏線の回収見事な完成度の高いストーリーなど、秀逸な点は多くありますが、なによりもそのテーマを貫き通したところを手放しで絶賛したいですね。

本作の軸はおそらく二つ、それは技術の正負と、そして一つの家族を通して、人と人が繋がることを描いています。

まずは前者から。本作は言わずもがな、インターネットが舞台の作品です。それ故、何度も何度もインターネットを活用して窮地を脱するシーンが出てきます。が、本作で描かれているのはそれだけではありません。そもそも本作における事件発生の原因は、SNS、ひいてはインターネットです。

そう、つまり、言ってしまえばインターネットに始まりインターネットに終わる、インターネットによるマッチポンプとも言えるような作品となっています。

が、この作品は安易に技術を批判したりはしません。何故ならば、本作はインターネットを別に批判したいわけではないからです。

あくまでも、インターネット、ひいては技術とは使われるためにあるものです。それを活用するも悪用するも人間である、と本作は言っているように思えてなりません。

包丁だって、あれは食材を調理する道具ですが、一つ違えば人を殺せる道具です。が、これに対して闇雲な批判をする人間はいません。何故ですか?人類の間に、包丁に対する倫理観が広まっているからです。そう、「包丁は人に向けるもんじゃない」と。

インターネットも、何が違うというのでしょうか。

この映画は、そう言っているように感じました。

 

若干ポエム入ったのはこれで終わりにして、後者の話をしましょう。人と人が繋がる、ということです。

本作は親娘の物語です。行方不明になった娘を探す中で、父親は自分が娘のことを何も知らないことが浮き彫りになってきます。そして娘は、父親に対して絶望していることが明かされるのです。

そこにあったのは母親に対する認識の断絶であり、ややありきたりではない、しかし家族との距離の取り方が不器用な、ありがちな家庭の姿です。

そして、それは本作で徹底して描かれている、人と人との繋がり、というテーマにも合致することです。

「別に仲良くないし……」と言いながら、いざ事件発覚すると親友面してお気持ち長文映像をYouTubeにアップする学友たち、事実を知らずにヒートアップするSNSの人たち、そして真犯人の親子……。

人と人とが繋がることは、非常に難しいことです。弟が言ったように、自分のことを全部話すことなんて、現実にはほとんどと言っていいほどにありえないことです。が、それでも、繋がる以上は、適切な距離感で、適切な対応を、それが必要なんです。

ラストのシャットダウンするシーンは、色々と文脈が乗っかってて、もの凄い映像でした。ただ単に、シャットダウンする、というだけのシーンに、あれだけの意味を込められるんだから凄いことです。

 

当然、ストーリーも非常に良かったです。良い推理ものの条件は、なるべく序盤で必要な情報の全てが開示されていることですが、本作はそれを地で行っていて非常に良かったです。あのシーンのあれがあの意味だったのか、と気づくことが多々あり、伏線回収の快感を何度も味わえる(そして戦慄する)ことができます。本当に作り込みが凄いです、多方面に。

同じサンダンス映画祭で受賞した『THE GUILTY/ギルティ』も、傲慢という罪を描く名作でしたし、サンダンス映画祭は要チェックですね。いや、僕以外の人はもう周知のことではあると思いますが……。

 

act-revuedrive.hatenablog.com

 

『search/サーチ』、今なら既に各種サイトで配信もしてますし、皆さん観てくださいね。