アクト-レヴュードライブ

備忘録的なものです。

『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』感想─静謐な空気溢れる、復讐のフィルム・ノワール。

ファイティング・ダディ 怒りの除雪車(字幕版)

2015年、この邦題がひどい!ベスト10入りは確実なんじゃないんでしょうか、知りませんが。いや、心底日本のタイトルに関するセンスのなさには呆れ返っています。タイトル以外もセンスない所が多いですけどね……その点、洋画はタイトルだけはセンスがあるのでまだマシです。はい。

※ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この映画、このタイトルでおおよそ想像される内容、間違ってはいないんですが致命的なすれ違いを起こしていて、それこそ映画内で起こっているすれ違い抗争劇の如きすれ違いっぷりを起こしています。

それはそれとして、この映画非常に素晴らしかったです。

舞台がノルウェーということで、雄大な自然や景色、風景と言ったものを遺憾なく画面作りに活かしているのがまず良いですね。この映画のストーリーやテーマ的なものとも合致していて、画面に良い雰囲気を醸し出しています。

単純なストーリーもやはり素晴らしいですね。言葉で語るタイプの作品ではないので、やや難解(多分狙ってる)ですが、わかりづらいのではなくきちんとわかるように要素を配置しているのが素晴らしい。

あとストーリー自体は極めて真面目なのに節々で笑わせにきてるのが酷いんですよね(褒め言葉)。まずこの映画の代名詞である(ほんとにそうか?)死亡カットイン演出。最初は黒バックに十字架をかけて通り名と名前が出てくるの、スタイリッシュでカッコ良かったんですが、段々とテンポよく表示されるようになりこちらを笑わせに来ていました。ラストの9人同時はギャグでしょ。

あのチャイナマン関連とか、滝に死体を投げ捨てるカットの使い方とか、とにかく真面目な中で、緩急を取るためか"マジ"でやってるのかわかりませんが、とにかくギャグが多い。それは直接的なものだったり、間接的なブラックユーモアだったり。特に、社会情勢に関連したであろうネタは僕が詳しくないのもあって地味に笑いづらく……。社会勉強はしといたほうがいいですね。あと聖書。どこのでもいいですが、聖書読むか読まないかでかなり変わりますね。人生。

そして演出の数々が非常に良く……。三者三様の父親像を交差させて更にそこに様々な人間模様を組み込むという割と複雑な構成をやり遂げていました。三者三様の父親像の対比が素晴らしく、ストックホルム症候群とネタにもしていましたが、伯爵一家は最悪さが良かったですね。息子は強く生きてほしいです。それと、特にあの……えっと……(ググる音)……パパとニルスの対比が非常に良くて……ジジイがかっこいい映画はいい映画です。あのラストシーンも凄く良いですしね。個人的には今年見た映画でもトップクラスの読後感です。

あれを除けば……。ラドヴァンは一体何だったんだ……。

 

日本の邦題をつけるセンスのなさに関して本当に辟易していますが、それはそれとしてこのタイトルじゃなかったらきっと観なかったことを考えると複雑な心境です。まあ……適宜ですね〜。

 

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