『WE ARE LITTLE ZOMBIES』感想─先鋭的なセンスで魅せる、歌とゾンビの物語。

やはり映画を選ぶときには賞が基本的にあてになるわけで、それも出来るだけ変な……もとい、独創的な映画が多く受けている賞なら尚更です。サンダンス映画祭はそこが強いですね。『ギルティ』とかマジで良かったですし。

『WE ARE LITTLE ZOMBIES』もまたサンダンス映画祭で賞をとった映画です。やはりというかなんというか、独創性が強くて最高でした。

※ネタバレ注意！

本作はバンドが(主に宣伝の)メインになってはいますが、その実作風は非常に複雑怪奇です。まず根底に8bitに対するリスペクトがあり、社会や大人に対する恨みつらみが込められています。

その最大の特徴は全編ゲーム調で進むことが挙げられるでしょう。シーン毎の転換にはステージ名のカットインが入りますし、サウンドは基本的に8bitですし、随所随所でテキストメッセージが表示されます。これはラストで効果的に使われる演出な訳ですが、その話は後で。

やはりというべきか、この作品はストーリーが非常に魅力的な映画です。

魅力的というとやや語弊がありますが、とにかく普遍性のある物語というのはいつの時代も強くて、非常に評価されやすいわけです(普遍性のないものでもあるものでも良いものは良いわけですが)。

本作は四人の子供達=リトルゾンビーズによる物語なわけで、四人それぞれにバックボーンがあるわけです。全員それぞれかなり酷いんですが(イシだけ比較的まともだと思う)(でも子供にあんなこと言うなよ)、それぞれ現代社会の闇という感じの家庭で凄まじかったですね。もっと凄まじいのはそんな毒のある描写をユーモラスな描写として昇華しているこの映画の手腕なんですが。マジで意味わからないレベルで不快感が無くて、びっくりしましたよ。まあそれはそれとしてバッチリクソだなって思えるバランス感のある描写になっていたので、そういうところ含めてセンスが爆発しているなぁと。

でも家庭の酷さレベルで言えばイクコ≧ヒカリ≧タケムラ>>>>>イシだと思ってますけどね。それぞれ酷さのベクトルが違うので一概に言えませんが。

そして何より凄まじいのはその映像センスと矢継ぎ早に繰り出される映像の数々です。

ステージが変わる毎に、演出も基本的に変化している上に、それぞれが基本的に凄まじく先鋭的なセンスで繰り出されかつクオリティも高いのでビビッドでセンセーショナルでエモーションな映像の洪水でクラクラとしてきます。形容詞は適当なので気にしないでください。

よくもまあ、これで通す気になったな、と言わんばかりの映像で、逆にこれだけふざけて(褒め言葉)る映画の方が逆に良いのかな、とも思ったりします。

また音楽面も触れずにはいられないですね。物語を絶妙に盛り上がる劇伴のクオリティもさることながら、やはり特筆すべきは劇中歌です。本作の主題歌である(確か)『WE ARE LITTLE ZOMBIES』を始め、多数の楽曲が本作を彩り、その全てが基本的に良曲揃いで耳が飽きません。

本作のテーマ的な部分のストーリー、明確に語られることなく終わるんですよね。それとなくヒントは散りばめられているので、わかる人はちゃんとわかりそうですけどね。僕はわかりますが？(威圧)

全体的に今の社会の風刺が強い印象で、それをゾンビになぞらえて淡々と語っているという印象が強いんですよね。

一つ一つの社会問題の根は深いのに、それを決して掘り下げることなくただ嫌な面だけを投げつけて逃げると言う手法が割と見受けられ、よくもまあこんな映画を作ったなと何度も思ったんですが、こう言うのも必要なのかもしれませんね。

それはそれとして、作中でも度々取り上げられる「エモい」と言ったTwitterワード群を鑑みると、僕らがこの映画を見た時点で既に「負け」なんですよ。

つまりこの作品が撃っている一つのテーマとして、「人の人生を消費すること」があると思っていまして、それは度々現実でも見受けられます。で、そんな状況の風刺をしているのがこの映画の一部ストーリーで、それを見て僕らも楽しんでいる。この映画に明確な悪はいませんが、そんなおおよそ観客が憎く思うだろうポジションにいるのが僕ら観客なんですよ。この構造を意図的にやっているとすれば相当なものですよ。

正直言って宣伝文句ともだいぶ違うと思うと言うか、宣伝が実際の内容からあまりにも乖離しすぎてると思うんですよね。見ればわかると思いますが、別に……いや、やめましょう。何を感じるかは観た人の自由ですからね。何が幸せなのかも自由なように……。

ところで……この映画のラストシーンあるじゃないですか。エンドロール後のあれ。あれ、どういう意味なんですか？？？？？？？？？？