アクト-レヴュードライブ

備忘録的なものです。

『仮面ライダージオウ』感想─平成を駆け抜けた者へ送る葬送行進曲。

仮面ライダージオウ Blu-ray COLLECTION 1

仮面ライダージオウ』、終わりましたね。正直全く終わった気がしてませんが。近年のライダーの最終回後まで手厚く色々やってくる政策、善い面も悪い面もありますね。今更な話ですけど。

※ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成ライダー20周年記念作たる今作は、様々な期待を背負った作品であったことでしょう。特に、レジェンド周りの。

結局それ自体はあまり果たされてないような気もしますが、それはそれでいいわけです。何故ならば、その物語は「常盤ソウゴの物語」であるから。

仮面ライダージオウ』とは、平成ライダーの象徴たる存在だった仮面ライダージオウが、ライダーに拠らないその自己を確立するまでの物語だと、個人的には解釈しています。

レジェンド達が出演するただのお祭り、記念作ではなく、ソウゴ達を描く、ソウゴ達の物語としての物語。最後までその軸自体は決して揺らがなかったのは本当に凄いと思います。特にソウゴとゲイツの関係性を一年間にわたって描き切ったのは本当に凄かった。というかまあ、ライダー三人に関しては描写は良かったんですけどね。

 

後、『ジオウ』を語るなら忘れてはいけない(というか忘れられない)のがこの人、仮面ライダーディケイド

DETAIL OF HEROES EX 仮面ライダーディケイド 特写写真集 KAMENRIDE【復刻版】

1クール目の終わりに颯爽と現れ、終始大きな存在感と影響を残し続けていきました。ディケイド=門矢士が自分の力を自覚してやってるという感じがすごく良くて、特に終盤の展開は実質的に『仮面ライダーディケイド』をやっていたりして本当に世界の破壊者ここにあり、と言った感じでしたね。

 

物語的には、『Over Quartzer』が相当平成ライダーの映画として良すぎたのもあるんですが、本編はテレビでやれるスケールなりにちゃんと描きたいことを描いてたのが良かったです。『ジオウ』は時間ものなので、全体的に過去と未来の対比の構造があるんですが、ラストシーンはラストなだけあってそれを端的に象徴していますね。繰り返しているようで、ちゃんと前に進んでいる。いよいよ平成で2018年に戻ったけど、そこには確実に時間が乗っかっているんです。まあ、それはそれとして平成は終わらせないといけないから、『Over Quartzer』があるんですけどね。

個人的には「『ジオウ』ループ説」はかなり推していきたいですね。矛盾も色々と無くなるし、何より勝手に文脈を乗っけられるので熱い。まあ、これはこれで齟齬が無限に発生するのでなかなか……と言ったところですが。

 

後、やはりちゃんと褒めないといけないのはレジェンドの扱いでしょう。何だかんだと忙しくて出れない人もいた中、半分以上のレジェンドを集めたのは本当に凄い。素直な本編オマージュの展開から、予想もつかないような融合展開、更には力押しによる本編の改変、等々……様々な方法でこの一年、息もつかせずに楽しませてくれたことは確かですね。個人的には、やはりアギト編がベストバウトか。あの回だけ素直に素直すぎるんだよなぁ。そこがいいんだけど。

出れないレジェンドに関しても、本編中で名前を出したり、ライブラリ等々で顔だけでも出したりとか、序盤は特にその扱いに慎重でした。それぐらいの慎重具合も嫌いじゃないですが、やはり春映画の冒涜具合が嫌いかと聞かれると嫌いではないので(復活!と予告されていたのに実態はただの偽物だったレーザー、ガチャでbotと化した北岡先生の『超スーパーヒーロー大戦」が顕著)、終盤感動ポルノのために雑に召喚されては雑に消えていくレジェンドを見て春の気配を感じていなかったわけではありません。

まあ世界観も設定もバラバラな平成ライダーに、整合性という概念を持ち込もうとしただけマシだと思おます。結果的に、「これジオウの世界の○○だよね?」みたいな感じになってなくもない気がしますが。そっちの方が平和かな。

まあ、意図的に設定部分やストーリー的に空白地帯を作っている気もしますが。その方が視聴者間で勝手に補完してくれるから、というのもなんとなくわかりますしね。

 

キャラクター達も当然素晴らしかったです。「王様になりたい」という目標を掲げて、当初は「ヤベーヤツ」呼ばわりされながら(今もされてる気がする)も、一年を通すことでその存在感や主張に説得力を持たせ、そして魔王として相応しいだけの力をつけた常盤ソウゴ。彼の魅力的なキャラクターがなければ、この番組は味気ないものになっていたでしょう。

役者さんが蓮に非常に似ていることで話題になり、最終回でも蓮みたいな死に様を見せた漢、仮面ライダーゲイツこと鳳凰ゲイツ。結局鳳凰院とはなんなのか、個人的にはこれを回収して欲しかったんですが(してたっけ?)、まあそれはいいです。概念としての「二号ライダー」のエッセンスを濃縮した彼は、その個性も活かし、ドラマに華を添えてくれました。実際、その精神性はかなり秋山蓮に近いと思います。役者さんに関しては、流石に今似てるとは思いませんが。顔つきがかなり精悍になったと思います。これはソウゴにもいえますけど。

終始ミステリアスなキャラを崩すことはなかったウォズ。劇場版でその正体が明かされ、おそらくテレビ版でもそれと齟齬が発生しないようになっている描写が散見されるなど、彼もまたこのドラマを彩る非常に魅力的なキャラクターでした。コメディからシリアスまでなんでもこなせるそのキャラ性は、かなり役者さんによる部分が大きいでしょう。ウォズに関しては本当にそう思うんですよね。あの人じゃなかったらウォズは成り立ってなかったと思う。本編で数少ない二役の演じ分けをほぼ完璧にこなすなど、本当に素晴らしい演技を見せました。

もちろん、ツクヨミもいいキャラです。もはや所謂「ヒロイン枠」などには収まることのないパワータイプのキャラなのはおそらく後世まで語り継がれることでしょう。仮面ライダーツクヨミの今後の活躍を期待しています。

更に、タイムジャッカーの人達もいます。主にウールくんがかわいそうという感想に占められてしまいますが。彼だけなんか……こう……報われなくない?みたいな……。

スウォルツ氏も最後までその小物っぽさを崩すことなく散りましたね。個人的には小物の割に無駄に強いので、グランドジオウの活躍が無くなってしまうのが地味に嫌なポイントでしたが、まあ最後まで小物っぽさを貫いてくれたのでかなり好きですね。

 

そして避けて通れぬ道が一つ……海東大樹……。

第10話「ファイズ学園の怪盗」

海東はマジで凄かったですね。終始意味不明だけど、本編からして意味不明だから意味不明なことに意味があるという意味不明なキャラ。が、行動原理自体は一貫していて、それは「門矢士」。彼は士と望む未来のためならばあらゆる手段を使う……という解釈にしてますけど、これ気持ち悪いな。重すぎるだろ。

門矢士が割と真面目なレジェンドっぷりを見せたのに、海東が終始海東だったのが酷すぎる。まあそれが海東というキャラなので正しい気もします。いや、書いておいてなんですが、正直海東大樹のことなんて一生わからないので上に書いたこと全部忘れてください。

 

一年通して、凸凹もあったけど、それでも本当に楽しい一年でした。「え!?!?」と叫んだ回数はいざ知らず、劇場で号泣した回数もいざ知らず、テレビの前でキレた回数もいざ知らず。以前、中間感想を書いた際に、「この作品は記念作ながらも、平成ライダーの平均値的な、いいこさんな作風だ」という趣旨のことを書いたのですが、テレビ版は終始そういう感じでしたね。劇場版は平成そのものに踏み込む関係上、だいぶ攻めた感じでしたが、テレビ版は平成ライダーの総括なので割と最後まで真面目ではありましたね。とは言え、たとえ終わるとしてもそこまでに積み重ねた時間は決して無駄ではない、なんか行ける気がする、という話なんですよね。ま〜あ近年ではかなり好きですね、『ジオウ』。

仮面ライダーゼロワン』も期待していますね。令和ライダー一本目、果たしてどうなるのか。楽しみです。