『2010年』──あらゆる面で平凡となった「名作」の続編。
今日映画『2010年』を観た。
面白かったが……。
※ネタバレ注意!
2010年
本作はかの名作、『2001年宇宙の旅』の続編として制作された映画だ。
僕は2001年の方を一度だけ見たことがあり、その時思ったことは二度と見たく無いな、ということだった。
映像表現は、現代から見ても高レベルであるし、今でもあれを超える映画はなかなか無いが、極限までセリフを排したストーリー構成や、作中のガジェットの動作の一つ一つを長尺で描くことなど、エンターテインメントとしての映画としてみれば、あの映画は正直褒められたものでは無いと思う。
しかし、2010年がその超芸術的映画の続編と聞けば、身構えずにはいられない。
今度はどんなパンチの効いたものが飛んでくるんだろう。そう期待してなかったと言えば嘘になる。
そして飛んできたものは、想像を絶する「普通」の映画だった。
平凡な表現、平凡なストーリー
2010年は2001年から9年後の世界、いわゆる冷戦下の米ソが主役だ。
2001年で残った謎を、冒頭で簡潔にまとめ、反発するメンバーたちが、時に悲劇と遭遇しながら絆を深め、そして目的を達成する……。
続編としてはこれ以上ないほど満点の内容だった。
しかし、映画としては、監督が変わったこともあり、表現の方向性が全く異なる。
まず冒頭から喋りまくるし、カット割りはわかりやすくなっている。悪く言えば無駄なカットも多くなく、無難に見やすい映画。
途中途中では地球に送るメッセージのていで、それまでの行動とこれからの目的を簡潔にまとめたナレーションが入る。
登場人物たちが何を考えているのか、何をしようとしているのか、何をしたいのか、何が起こっているのか。
果てしなく理解を阻害する構成だった前作から、極めてわかりやすくなっている。悪く言えば、平凡。
ストーリーもまたわかりやすい。何故9年前ディスカバリー号で事故が起こったのか。デビット船長はどこに行ったのか。何故ハルは反乱を起こしたのか。モノリスとは、一体何なのか。
それらの謎を調査するため、レオーノフ号に米ソの科学者と軍人が集まる。当時(2010年世界)の情勢もあって、当初は反発していた彼らだが、船員の一人の死を経験しながらも、徐々に友情を育んでいく。
ハルが異常を起こした原因も判明する。
しかし地球では米ソがついに戦争状態に突入し、仲間たちは離れ離れに。しかしデビットが現れ、前作を彷彿とさせる演出でフロイドに警告する。
2日以内に地球に帰還するには、ディスカバリー号、つまりハルを犠牲にするしかない。ハルが再び異常をきたすかも……という不安の中、木星にはモノリスが大量発生する。
ハルと開発者チャンドラ博士が会話する中、木星では異常が進行している。
やがでハルが全てを理解し、自分の役割を全うすると決意し、レオーノフ号は地球に向かって急発進する。
そして木星は爆発(?)し、モニターにはデビットが送ったメッセージが表示され、物語はハッピーエンドとなったことが示唆される。そしてエウロパに佇むモノリス……と、いわゆるハリウッド的文脈がこれでもかと詰め込まれている映画なのだ。
エンタメ的には正解だが、2001年の続編としては不合格とも言える平凡なストーリーになったと思う。
感想
僕は正直に言って、2001年宇宙の旅があまり好きではない。
わかりづらいストーリー、冗長に感じる映像……エンターテインメントとしては不合格(少なくとも僕はそう思う)だからだ。
しかし一本の映画としては確かに素晴らしい映画だし、その映像表現は現代の追随を許していないだろう。
だから、2010年も正直、そう言った方向性を求めていなかったと言えば嘘になる。
しかし実際に提示されたストーリーは、わかりやすさを追求した面白いものだったし、映像表現は当時としては素晴らしいものだっただろう。
つまり、エンターテインメントとしてみればかなり高評価だし、面白い映画だった。
しかし、これが観たかった映画なのか。僕はそれがわからない。きっとわかることもないと思う。