『ユージュアル・サスペクツ』感想─映画史に残る、全てを覆う嘘。
新年一発目の映画として、『ユージュアル・サスペクツ』を観ました。いやー大満足。まさかまさかの展開でした。
※ネタバレ注意!
この映画はどんでん返しの代表作的な扱いをされることの多い映画です。
そしてその評判に違わず、凄まじい大どんでん返しを見せてくれます。
観客は、淡々と「事実」を語るヴァーバルに対する疑いの念を、映画が進むにつれ無くしていきます。事実、途中で動かないはずの左手でクイヤン捜査官を払いのけるシーンがありますが、初見では気づいていない人が多いこともそれを裏付けています。
この辺りの心理誘導は、『グランド・イリュージョン』でも似たものがあったな、と思ったり。
いずれにせよ、すっかりヴァーバルを信用しきった──前情報無しで映画を見ている人ほどに──人はラストのラスト、クイヤン捜査官が掲示板から推理し、ヴァーバルが普通に歩き出すまで完全にキートンがカイザー・ソゼだと思い込むわけです。
そして映画を観終わった人はこう言うのです。「何が真実?」と……。
僕個人としては、まず面通しは真実だと思います。じゃなきゃ一体何を信用しろと言うのか。ただ、名前の信憑性は怪しいものですけど。彼らが起こした事件では、レッドフッド関連以外はだいたい真実かと。コバヤシは多分関わってますし、イーディ云々も多分真実です。
この映画のキモはネタバラシシーンで、そしてカイザー・ソゼ(つまりヴァーバル)が実質嘘は言ってない点にあります。
つまりヴァーバルが五人で起こした事件も「真実」だし、コバヤシに脅されたのも「真実」だし、キートンが死んだのも「真実」です。カイザー・ソゼの伝説も「真実」なんです。ただ、ヴァーバルはそこに偽名を織り交ぜ、ディテールを意図的に省き、そして自分自身を隠しました。そして消えた……と言うわけです。
意外と賛否両論になることもあると言うこの映画、僕は気持ちよく騙されることができました。こんなブログなんて読んでないで、皆さん早く観てください。