『逆転裁判』における法曹関係者の描写の妙の素晴らしさについて。
僕の人生におけるベストオブゲームに確実に入っているのが『逆転裁判』シリーズなんですよね。
濃いキャラクター達、軽妙かつコミカルなテンポで繰り広げられる会話、濃厚だったり珍妙だったりするミステリー、良質でゲームプレイをシチュエーションに応じて盛り上げたり盛り下げたりしてくれるBGM、そして綿密な伏線を張り巡らせた壮大な(ツッコミどころもある)シナリオ……褒めるところは探せば無限に見つかります。その逆もまた然りなんですが。
そこで、今回はその中でも、『逆転裁判』世界における、法曹関係者の描写がいかに素晴らしいのか、という話をしていきたいと思います。
※当文章内における現実世界の司法制度の解説は正確なものではないことを事前に留意してから読み進めてください。
『逆転裁判』世界は、現実とは大幅にかけ離れた司法制度が整っています。最たる例は序審法廷制度ですね。既プレイ者ならご周知とは思いますし、僕が解説するよりも調べてもらう方がわかりやすいと思うのであまり深くは語りませんが、要するに「犯罪が増加しすぎなので逮捕即送検、つまり裁判するぞ」という制度です。『逆転』世界ではこの制度の施行後も現実世界と特に変わらない有罪率を誇るようですが。まあ確実に冤罪も生み出してると思いますけどね、あの感じだと。弁護士が捜査するだけで証拠品がわんさか出てく現場はやばい(原義)でしょ。
で、この序審法廷においても、法曹関係者、つまり裁判官、検事、弁護士のやることは特に変わりません。弁護士は依頼人の利益のために、また自分自身の利益のために最大限努力し、また検事は被疑者の有罪を確定するため最大限努力し、裁判官はその討論を聞き、判断する。それが法廷だと僕は解釈しています。重ねて言いますが、法的に正確な認識ではないことを留意しておいてください。
で、この法曹関係者の描写は『逆転裁判』は極めて上手い。真似をするには特徴を誇張する、とはよく言いますが(『ルパン三世 グッバイ・パートナー』は名作なので皆さん見てくださいね)、『逆転』ではその特徴が極限までカリカチュアされた描写がなされています。
それが最も顕著なのが『逆転裁判2』です。
『逆転2』は「弁護士とは?」というのがメインテーマです。その集大成となるのが最終話なわけですが、もともと三部作の最終回用に取って置くつもりのネタだった、というだけのネタなだけありシナリオの完成度は凄まじいです。
前作で御剣が見つけた答えなど、『逆転』における裁判の全てがこの話に詰まっています。
やや話が飛びますが、『逆転裁判』には霊媒が証拠品として度々登場します。
最初は警察が秘密裏に使っていただけですが、だんだんと感覚が麻痺してきたのか、『3』最終話では霊媒された人物が証言者として出てきたりします。
それで、『逆転裁判』に一貫しているのが「霊媒もただの証拠の一つに過ぎない」という点です。つまりは、霊媒であっても決定的な証拠ではない、ということですね。
そもそも『1』最終話で明かされたようにDL6号事件の被害者、御剣信を霊媒して証言させたところで、その証言にはなんの正確さも無かったわけです(信は生倉が撃った、と言ったが実態はとても複雑だった)。そもそも考えて、一対一で起こった殺人でもない限り被害者に聞いても犯人なんてわかるわけがないんですよ。「死人に口なし」、とは言いますが、それはシンプルな事件でのみ成立するものです。まあDL6号事件は複雑すぎるきらいはありますけども。
その解釈を更に進めて答えを出したのが『逆転裁判6』です。
『6』では霊媒が一時期の自白のような立ち位置にあり、被害者が死に際に見たものを再現する「御魂の託宣」というものが新しく登場します。これは最早完璧に見えますが、実際にはそんなこと全然ありませんでした。最終話とか露骨ですしね(何が起こっているか全くわからない被害者の視界)。
『逆転6』はそれまでの『逆転裁判』の総括的な面があって好きなんですが、特にシリーズにおいて重要な「霊媒」と検事、弁護士の在り方を絡めてやってくれたのが本当に良い。
弁護士と検事は互いに真実を追求するために、あらゆる可能性を追求する、という……。
この描き方が本当に素晴らしい。弁護士と検事、という職業自体を悪役とかにするのではなく、あくまでもその職業の持つ力自体は正しいことに使えるけど、使う人間次第でどうにでもなる、という表現にしてるのが本当に好きなんですよ。この辺は『アンナチュラル』でも似たような表現がありますね。『アンナチュラル』は名作なので見てください。
ついでに裁判官もややコミカルですが、その役割をしっかりと描いています。検事と弁護士の示した可能性を吟味し、そして突き出された真実を受け入れる、ただそれだけなんですが、それだけが非常に難しい。あの裁判長は、まあ、それができる稀有な人物ですね。
まあ長々と話しましたけど僕の文章でプレゼンするよりもさっさとプレイしてください。その方が早いですね。
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そういえば特に触れませんでしたけど『大逆転裁判』も非常に名作です。ただプレイするなら絶対に、 絶対に『1』と『2』を同時に買ってください。それができない場合はあまりおすすめできません。
また、今なら全47話の『逆転裁判 〜その「真実」、異議あり!〜』というアニメもあります。作画は……まあ……と言った感じのダメなA-1ですが演出自体はキレてます。また『123』のシナリオ担当である巧舟氏原案のアニメオリジナル回もあるのでそういう意味でもおすすめです。
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