『名探偵ピカチュウ』感想─リアルなポケモンのディテールは見事な傑作。
ゲーム、『名探偵ピカチュウ』をプレイした人はどれだけいるのでしょうか。
かのクリーチャーズが開発を手がけ、ポケモンと人が共生する世界観を、シネマティックに描いた傑作推理アドベンチャーです。総プレイ時間自体はそう多くないので、そこには満足を抱く人はいるかもしれません。特にやり込みもないですからね。まあ及第点は超えているのでおすすめです。
で、その『名探偵ピカチュウ』を映画化した(しかも実写)というのが今回の映画『名探偵ピカチュウ』。
色々と不安な点しかなかったのですが、蓋を開けてみれば結構良かったです。
まあでも原作でも最初に扱う事件のエイパムがちゃんと最初に障害になるのは良かったよ。ちゃんと製作陣がゲームやったんだってわかるから。
— T.A.W.O. (@CGB_001) 2019年5月3日
※ネタバレ注意!
アメとムチを使い分けていきましょう。まずはアメから。
まず驚いたのは、思っていたよりも忠実に原作ゲームのストーリーラインをなぞっていた、という点ですね。映画用にアレンジは入っていたものの、そのアレンジが逆に既プレイ者に対するミスリードとして作用していたのはさすがというべきです。ただ、あそこまであからさまだと逆にわかりやすいですけどね。原作ではロジャーが犯人だったんですが、この映画では父親である……あの人名前なんでしたっけ、ロバート?が出てきたことで、やや雑ながらも家族の絆、というテーマに対する光りと影をしっかりと描けていたと思います。
それと、やはりこの映画を語る上で外せないのが、ポケモンのディテールでしょう。
発表当時こそ物議を醸したものの、やがてしおしおのピカチュウ、などとして人気を博していったピカチュウをはじめ、「もし現実にポケモンがいたら」、という仮定に対して非常に真摯に回答を示したと思います。
まずその種類、数が凄まじい。本当に800オーバーの種類のポケモンの全てのモデルを作ったのではないか、と思うほどたくさん、そして自然に登場しますし、特段説明なくポケモンが日常に入っているのが良い。交通整理をするカイリキー、消化活動で活躍するゼニガメ、配達員の鳥ポケモン達、寝ているだけのカビゴン……などなど。僕はオクタンの屋台が好きです。
またストーリー面も非常に良かったです。原作のミュウツーはどっちかといえば自分では動かずに、ウルトラマンでいえばウルトラマンキングみたいなポジションに収まっていたのが非常に好きだったんですが、この映画のミュウツーも非常にいいキャラしてましたね。劇中で言及される設定も相まって、『ミュウツーの逆襲』を意識するキャラでした。あとピカチュウが当然のように「世界最強」といったり、その割には妙な機械には捕まるバランスだったり、そういうところの再現度も高くて良かったです。
総じて全体的にスタッフのポケモン愛を感じる映画でしたね。そこは非常に良かったです。
アメの時間は終わりです。ムチ行きましょうか。
いや……まあ……。
— T.A.W.O. (@CGB_001) 2019年5月3日
名探偵ピカチュウ、想像してたよりちゃんと原作ゲームのストーリー準拠の話だったし、ポケモンの表現自体は良かったんだけど、そういう問題ではない問題が……。
— T.A.W.O. (@CGB_001) 2019年5月3日
ストーリーが元々純テキスト量で8時間なものを無理やり圧縮して2時間に収めたからものすごいことになってる。
— T.A.W.O. (@CGB_001) 2019年5月3日
全体的にこうなんですよ。
まず原作ではティムがポケモン嫌い、父親嫌いの設定ないですからね。そこでまずノイズが発生してしまう。どちらかといえば自分から父親の謎を解き明かそうと動いてますし。
まあそこはそれとして、ちゃんとやってくれるなら良かったんですよ、ちゃんとやるなら。
問題はそのポケモン嫌い、の方が浮き気味で終わったのがダメなんですよ。
父親嫌いの方は理由がちゃんと説明されたんですが、ポケモン嫌いの方は理由も特に説明されずに放置されてしまいます。そしてなんかなあなあのままで映画が終わるんですよ。そもそも母親が死んだ時に何があったのかとかの過去の話があまりにも中途半端な描写すぎて「そっちで考えて補完してね〜」と言わんばかりのストーリーなんですよね、ティム周り。
それとラスボスのクリフォード父の目的が、あまりにも突破すぎるというより、かなり意味不明なものに仕上げてきたのは不満というよりは謎な点ですね。原作ではロジャーがRを作りパレードに散布(ここに関しては原作通りなんですよ)しようとした理由は、ポケモンを支配しようとした、という理由で、そもそも原作のRはミュウツーから作られているものの、ポケモンの精神を支配して自由に操るための薬なんですね。そこがミュウツーの細胞を使っているから人とミュウツーの入れ替えが容易になるよ、ぐらいのノリの薬になってしまったのがなんとも……という点ですが、まあそこは本当に大した問題ではなく。
最悪ロジャーが父親の栄光を破壊したいからポケモンを暴れさせたい、という(若干陳腐な)動機でもよかったというか、その方が自然ではあるんですよね。わかりやすいし。
ここの最大の問題点はクリフォード父がそこに至るまでの過程が全く描写されていないことです。いや、描写はされているのですが、あまりにもあっさりすぎるし、わかりづらすぎるんですよね。ガンがポケモンと過ごすことで治った、という描写こそあれど、そこからあのロジックにつなげられるだけの推理材料がなさすぎるんですよ。ここでも、「自分で推理してね〜」と言わんばかりのぶん投げが発生しています。なんだか『名探偵ピカチュウ』はそこが味なんじゃないかと思ってきました。いや、なんで観客の方が推理しなきゃいかんのよ。
あと全体的な問題点ですがティムとピカチュウが主体となった行動がほぼ無駄なのが気になりましたね。核心をつく情報は全部だいたい他の人からの情報だったり、敵からのミスリードに踊らされているだけだったので。原作ではちゃんとティムが行動することで謎が解けながらも深まる、ということができていただけに、少し残念です。
まあ総評としては映像表現は満点、ストーリーは及第点程度、といったところでしょうか。ただ、原作ではぼかされ気味だったピカチュウが何故ティムと話せるのか、という謎をこっちではちゃんと説明してくれたのでその点は高評価です。というかスタッフの解釈なんですよね、あれ。
やらないかなと思っていた進化もやりましたし、ポケモンの生態を活かした展開もちゃんとありましたし、「わざ」もちゃんと活躍しますし、その点は本当に良かったんですが、それだけにストーリー面がややよろしくなかったのは残念です。まあ、僕はBlu-ray買いますけどね
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