『ボーダーライン:ソルジャーズデイ』感想─前作の空気を残しつつ、確実に違うものになった続編
先日『ボーダーライン』を観まして、そのストーリーや展開になかなか愕然としました。
特に主人公が実は○○○だったと明かされる展開なんかは、映画のテーマとのマッチも含めて本当に驚愕しました。
『ボーダーライン』感想─観客に問いかける善悪の彼岸 - アクト-レヴュードライブ
で、その続編が公開中とあっては観に行かないわけにはいきません。順序が逆ですが。本当は続編を観るために前作を観たんです。
僕は本当に観たいものに関しては、一切の情報を遮断していくタイプです。だから、今回の『ボーダーライン:ソルジャーズデイ』の監督が変わっていたなんて、知らなかったんです。
※ネタバレ注意!
今作、ソルジャーズデイは不法入国者のシーンから始まります。多分観る人によってはここで違和感を感じる人もいるんじゃないんでしょうか。
その後、スーパーマーケットらしき場所に視点が移り、自爆テロの様子が映されます。このシーンはすごく良かったですね。日常が突然破壊されるテロという行為の異物感と恐怖が描けていたと思います。僕は日本に住んでて良かったと思いました、あのシーン。
そして前作で示唆された、より上の存在、選ばれし高官達が今回はがっつり映されます。
防衛省の大臣ですね。その関係で今回はマットとアレハンドロが最初から出張ります。特にアレハンドロは主人公であることを隠しません。
そしてアメリカ(あえて主語は大きくします)は卑劣で卑怯な作戦を実行に移します。カルテルのボスの娘、イザベルを拉致して敵対カルテルとの抗争を起こさせようというのです。
この時点で察しのいい人はきっと気づいていたことでしょう。あ、今回テーマ違うな、と。
前作は一般FBIの視点から、メキシコの闇と現実、そして暴力と権力を描く名作でしたが、今作は原題の『Sicario: Day of the Soldado』を彷彿とさせる展開でした。
それがはっきりわかりやすいのは、アレハンドロとSicario(暗殺者)になってゆく少年、ミゲルの存在です。
アレハンドロは暗殺者で兵士ですが、自分の良心に従いイザベルを助けます。対してミゲルは、金のためにカルテルの仲間となり、そしてアレハンドロを撃ったことである程度の地位まで登りつめたようです。
このどうしようもない暴力の連鎖と、アメリカ、ひいては権力の持つ闇が今作のメインなのかな、と観終わって思いました。観てる時はなんか違うなこれ、としか思えていなかったので……。
予算はやはりというか、露骨に増えた感が凄いですね。爆薬の量が。
前作が、映画館で観れなくて後悔したので、今回はちゃんと映画館で観れて良かったです。特に音響は映画館クラスじゃないと。あの急に爆発する感じとか、クッソうるさい銃声とかは一般家庭じゃ再現不可能ですからね。
あと、オチがあまりにもアレ過ぎたので調べたらボーダーラインって三部作になったんですね。まあ今作も、前作の絶望的な空気感と緊張感はしっかりと残っていたので、次作に期待、ということで。じゃないとこの映画も評価しづらい……。
Sicario: Day Of The Soldado (Original Motion Picture Soundtrack)
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